ホーム > 理事通信 > 第17回「動物とともに生きる~ 災害時の備えについて改めて考える~」
ご縁があって、2014年から「災害動物医療研究会」の幹事をさせていただいています。
もし災害が起きたとき、人の命を助けるのはもちろん最優先ですが、実は動物に関しても考えないと人を助けられない場合があります。例えば畜産農家の方で、動物を置いて人だけ完全に避難することができない場合もあります。いったん避難しても避難所から、危険な可能性がある避難地区へ家畜に餌をあげに毎日通ってみたり、一般の家庭でも犬や猫と一緒に逃げられないなら避難所には行かないと決心して、避難命令が出ているのに、犬や猫とうちに残ってみたり、ペットと車中泊を続けるようなことがあります。このような方のお気持ちは実際に動物の飼育者として痛いほどわかります。
補助犬と生活を共にし、補助犬に日々支えられている障がい者の方々は、動物が一緒に避難できないのであれば、絶対に避難しないし避難できないとお考えになることが多いかと思います。避難所はもちろん基本的に補助犬を受け入れないということはないのですが、災害時に身体にご不自由のある方が発災時のパニック時に補助犬と一緒に避難するのは非常に大変でしょうし、みんなに余裕がない時ですのでなおさら困難な状況でしょう。
災害医療研究会では、地域の獣医師会を中心に、人と動物に災害時に何ができるか、混乱しているときに物事をスムーズに進めるための指揮命令系統をどうするか、被災地の外にいる人たちが支援をする場合にどのような支援体制がいいか、受援体制に関しては何がいいかなど「VMAT」の立ち上げとともに勉強会を各地域で行っています。VMATとはVeterinary Medical Assistant Teamの略で、人のDMAT(Disaster Medical Assistant Team, 災害派遣医療チーム)の獣医医療版です。被災動物の救護、獣医療の提供を行うチームとなり、被災地域から派遣要請を受けてチームとして出動していきます。災害時の万が一の体制はちょっとずつ整いつつありますが、動物と暮らす私たち一人一人も万が一に備えた準備は大切だと考えさせられます。
実は災害動物医療研究会の活動に参加するたびに、自分の状況に反省するばかりです。我が家には犬も猫もいますが、災害時の準備は全く完璧とは言えない状態です。人に至っても同じです。仕事に行っている間などに災害が起きる可能性もあるので万が一私が帰れない時でも犬猫を誰に託すか、家族でどう落ち合うかなど細かい約束事も考えないといけないなと思っています。補助犬と暮らす方も、万が一の場合どこに避難するか、無事な場合にどこに届けるべきか、などぜひ調べて万が一の時に備えていろいろ考え準備いただけるとよいかと思います。また、補助犬と一緒に暮らす方は当センターもですが、地元の自治体、地元の獣医師会にも万が一の時はどこに逃げるのか、どのような計画かお伝えいただくようなこともよいのかもしれません。
(第17回・理事通信)