特定非営利活動法人 日本補助犬情報センター|身体障害者補助犬に関する情報提供、相談業務を行う学術団体です。

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第29回「コモンズ社会起業家フォーラムスピーチ」

専務理事兼事務局長 橋爪智子

2024年10月6日にコモンズ投信株式会社が主催する「第16回コモンズ社会起業家フォーラム」にて、7分間のスピーチをさせていただきました。

会場で聞いてくださった皆さんから、多くの反響をいただきましたので、理事通信でもスピーチの内容をご紹介いたします。

スピーチのテーマは「あなたは今、何を守りたいですか?〜そのために何に挑みますか?~」


皆さんこんにちは、NPO法人日本補助犬情報センターの橋爪と申します。
貴重なお時間ありがとうございます。

では、まず最初に皆さん、来年日本で行われる国際的な大きなイベント二つ、わかりますか?

一つ目、大阪万博です。

そして二つ目、11月にこの東京で開催されます。日本に初めてやってきました、東京デフリンピック、デフというのは、聴覚障害者のことです。
世界中から多様な方々がこの日本に集まってこられます。
まさに今、インクルーシブなおもてなしを始めるチャンスがやってきました。

さて、今回のフォーラム、こちらの画面をご覧ください。
こちら、リアルタイム文字字幕という、UDトークというアプリを活用して字幕を出しております。
今回この担当もさせていただいております。

まさにコミュニケーション、会話の壁、障害をなくすこのアプリは、話し手をサポートしてくれているアプリです。
全ての人に情報を届けたいと思う、会話の話し手をサポートする。
皆さんのスマホでも簡単にダウンロードできます。また多言語対応もしておりますので、興味がある方、後ほどブースにお越しください。
では、どうして私達、補助犬情報センターがこのアプリの運用をしているか。

身体障害者補助犬には三つの種類の犬たちがいます。
一つ目、盲導犬。視覚に障害がある方をサポートします。
二つ目、介助犬。手足に障害がある、肢体不自由者をサポートします。
そして三つ目、聴導犬。聴覚に障害がある方に必要な音を教え、音源へ誘導する。
この三つをまとめて、身体障害者補助犬、補助犬と呼んでいます。

この言葉、22年前、2002年に身体障害者補助犬法という法律ができたことで誕生しました。
私達はこの法律を作るところから、アドボカシーとして活動を続けています。

さて、2022年、私達日本は国連から勧告を受けました。ご存知でしたか?
全ての子供たちにインクルーシブ教育の権利を保障せよ、そういう内容が盛り込まれていました。
私達はここ数年、子供たちに対する教育事業に力を入れています。
昨年度は小学校から大学まで34校、2900人の子供たちに、当事者である補助犬ユーザーと一緒に授業を届けることができました。
また、4600人に補助犬の資料を届けることができました。

ここで私の友人の話をします。
1人目、彼女は盲導犬ユーザーです。
40歳を過ぎてから進行性の病気で、どんどん目が見えなくなりました。
一度は絶望のふちに立ちましたが、盲導犬と出会って明るさを取り戻し、見えなくなってから始めたフリーダイビングで世界大会に挑むぐらい素敵な女性です。
彼女が道を歩いていたとき、後ろから親子の声がしました。

「ママ、見て、盲導犬だよ。すごいね。」

お母さんが言いました。

「ほらぁ、あんたも言うことをちゃんと聞かないと、ああなっちゃうわよ」

これはほんの数年前の話です。未だに日本の障害者はそういう言葉を投げかけられています。

2人目、カナダに住む車椅子ユーザーの友人です。
彼女は大学生のときに、交通事故に遭って車椅子の生活になりました。
彼女が息子さんと一緒にカナダから帰国したときの話です。

「ママ!日本ってすごいね、テクノロジーが発達して障害がなくなるから、障害者が街にいないよ。」

しばらく旅を続けて、彼はまた言いました。

「なんでママばっかり謝ってるの?ママ、荷物みたいに扱われるんだね。」

こういう社会に私達は住んでいます。私達が構成する、それが今の日本です。
私の娘のエピソードを紹介します。
高2になる娘が小学校3年生のとき、学童のお友達のお兄さんは重度な障害がありました。
ファミレスでたまたま一緒になったので、隣でお食事をしました。
楽しくお食事をして帰ったとき、お母さんに最後に言われました。

「うちの娘、兄と一緒にいるときに友達と会うのをすごく嫌がるの」

その話を娘に伝えました。

「どうして?同じ人間なのにね。」

これが、私はインクルーシブ教育だと思っています。
我が子たちに何も特別なことは教えていません。
たまたま私がこのお仕事をしているので、お母さんの友達にいろんな人がいる。
そして、ときにその人たちがお母さんを助けるイーブンな関係、それを見ているんですね。
私はそういう、少しでも、1人でも多くの子供たちに障害当事者とコミュニケーションをとる機会を届けたいと思っています。

私が守りたいのは子供たちです。
我が子のためにも、社会をより良くしたい。

皆さん、美味しいものを食べに行きたいとか、おしゃれをしたい、遊びたい、外出したい、働きたい、こういう気持ちって当たり前のことだと思います。

この当たり前のことを当たり前にするために、補助犬というパートナーとともに、社会参加をしている私達の仲間がいます。
ただ、無理解や無知による差別は未だになくなりません。
私達、私も含め、ここにいる全員が障害者に死ぬまでに絶対にならないと言い切れる人は1人もいません。
最近、私も老眼が進んでいます。そう思えば、障害者の問題というのは、自分の問題、自分の家族の問題です。

この後、素晴らしいスピーカーたちのお話が続きます。
今日ここから、1人1人が自分事として何か一つアクションを起こす、そんな日になるといいなと思っています。
本日はご清聴ありがとうございました。

 


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