ホーム > ニュース・イベント・新聞記事 > 駅における視覚障害者の転落事故死報道を受けて ~全ての人が安心できる社会作りのために~
報道等でご存知の方も多いと思われますが、8月15日午後5時45分頃、東京メトロ銀座線青山一丁目駅にて、盲導犬ユーザーがホームから転落し、電車にひかれる事故がありました。残念ながら搬送先の病院にて死亡が確認されました。
この度お亡くなりになられた盲導犬ユーザーさんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
ホームに残された盲導犬は、訓練事業者により無事に保護されています。
この春、転勤にて上京され、活き活きと仕事をされていた矢先の、本当に無念な事故でした。
周りに居る私達がこれからするべきことは何なのか?・・・
まずは勝手な思い込みによる不要な躊躇を無くすこと。そして、とにかく当事者の声を聞き、社会全体で「全ての人が安心できる社会作り」の具体的なイメージを共有して行くことから始めましょう。
プロのトロンボーンソリストで、2代目の盲導犬と生活しておられる鈴木加奈子さんが、非常に分かり易くブログに書いて下さいました。ご本人にも許可を得て、ご紹介させていただきます。
トロンボーンソリストで、2代目盲導犬アリエルと暮らす鈴木加奈子氏のブログ「Kana’s Diary」
***以下、ブログ転載いたします ***
昨日の夕方、東京メトロ銀座線の青山一丁目駅で、盲導犬ユーザーさんがホームから線路に転落する事故がありました。
本当にショックで、悔やまれる事故です。
本来、盲導犬はホームの線路側を歩き、ユーザーは内側を歩くことになってます。
そうすることで、人が線路に落ちる危険がないからです。
ホームの左端を歩く形になるので、盲導犬は点字ブロックの外側を歩くことになり、見ていてもヒヤヒヤすると思いますが、犬自らが線路に落ちることはないので、それが正しい歩き方です。
ところが、事件が起きた時、ユーザーさんが線路側を歩いていたと言います。
狭いホームで人もたくさん、それに地下鉄は、音も反響しやすく、方向感覚もなくなりやすい場所です。
おそらく、人や柱を避けているうちに、ホームの端まで来ていることに気付かず、そのまま落ちてしまったのかもしれません。
周囲の人が誰も声をかけなかったのも、盲導犬がいるから大丈夫だろうという思いも多かれ少なかれあったと思います。
細かい状況はもちろん推測でしかないので書きませんが、このような事故が二度と起きないよう、私たちユーザーも、「無理をしない」「おかしいなと思ったら、すぐに人に尋ねる」ということで、しっかり身の安全を守りたいと思います。
「無理をしない」というのは、初めて行く駅など、自信がない時は、駅員さんの誘導をお願いすることや、あわてず、時間に余裕を持って行動するなどがあると思います。
そして、周囲のみなさんの見守りや手助けもぜひお願いします。
例えば盲導犬が線路側を歩いている(正しい歩行)の場合でも、通り道を広く開けてあけて、見守りつつ通してあげるとか、人が線路側を歩いている(危険な歩行)場合、突然手や体を引っ張るのではなく、その人にわかるような大きな声で、「ストップ!」や、「危ないですよ!」などのような声かけをしていただくと伝わりやすいと思います。
なにより、一刻も早く、ホームドアが設置されてほしいと思います。
せめて、人が多く利用する都心だけでも、それらのすべての駅に設置してほしいですね。
考えてみれば、子供からお年寄りまで、多くの人が利用するホームに、ホームドアがなく、そのまま両端が線路というのは、今まで当たり前のように見てきましたが、本当に危険な場所ですよね。
ラッシュ時のことを考えると、ゾッとします。
ユーザーさんが転落する時に、盲導犬のハーネスやリードから手を放したのは、せめてパートナー(盲導犬)の命は守りたいという、とっさの愛の行動だったのだと思うと、胸がいたみます。
このユーザーさんの命を無駄にしないためにも、安全なホームの歩き方の再確認、そして、周囲の見守りや、一刻も早いホームドアの設置を、強くのぞみます。
トロンボーンソリスト鈴木 加奈子 ~Kanako Suzuki~ 公式サイト
「http://kanakosuzuki.com/」